運送会社の賃金規程には何を定める?作り方や注意点を解説

運送会社では、ドライバーの労働時間管理に加え、歩合給(出来高給)や各種手当の計算が複雑になりがちです。基本給と手当、歩合給、残業代の関係が曖昧なままだと、未払い賃金や賃金控除をめぐるトラブルにつながりかねません。

本記事では、運送会社の経営者や人事労務担当者、管理者の方に向けて、賃金規程に定めるべき項目やドライバー特有の手当、歩合給、残業代の扱いについて解説します。自社の賃金制度・賃金規程を見直し、労務トラブルや未払い賃金のリスクを防ぐための参考にしてください。

目次

運送会社で賃金規程が重要な理由をチェック!

長時間労働になりやすく、歩合給や各種手当の種類も多い運送業では、賃金計算が複雑になりがちです。未払い残業代や賃金控除をめぐるトラブルを防ぐためにも、賃金規程の整備が欠かせません。

2026年の働き方改革についての対策は「運送業の働き方改革とは?2026年の法改正後の実態と生き残る会社の対応策を解説!」を併せてご覧ください。

賃金規程の基本

賃金規程とは、賃金の決定方法や計算方法、支払方法に関するルールを定めた規程です。基本給や手当の決め方だけでなく、締日・支払日、昇給や賞与の考え方についても定めます。就業規則本体に賃金に関する事項をまとめて記載する会社もあれば、賃金規程として別に作成する会社もあります。

いずれの形式であっても、賃金に関する取り決めを社内で明文化し、従業員がいつでも確認できる状態にしておくことがポイントです。規程が整備されていないと、担当者ごとに賃金計算の解釈が異なってしまうおそれがあります。

未払い賃金・労務トラブルの防止

運送会社の給与体系は、基本給に加えて歩合給や複数の手当が組み合わさっているケースが多く見られます。それぞれがどのような性質の賃金なのか曖昧なまま運用すると、残業代の計算に含めるべき賃金を除外してしまう危険があります。

その結果、退職後に未払い残業代を請求されるといったトラブルに発展するケースも少なくありません。

運送会社の賃金規程には何を定める?

運送会社の賃金規程には、基本給や各種手当、歩合給、割増賃金の計算方法、賃金の締日・支払日など、賃金に関わる項目を漏れなく定める必要があります。ここでは主要な項目を順に確認していきます。

基本給

基本給は、賃金制度の土台となる部分です。月給制・日給制・時給制のいずれを採用するのか、また基本給をどのような基準で決定するのかを明確にしておく必要があります。基本給は、歩合給や各種手当とは性質が異なる賃金です。

両者を混同したまま規程を作成すると、割増賃金の計算基礎に誤りが生じるおそれがあります。そのため、基本給の算定方法は歩合給・手当と明確に区分したうえで、規程に具体的に記載しておくことが求められます。

各種手当

運送会社では、無事故手当や愛車手当、運行手当、長距離手当など、業種特有の手当が数多く用いられています。これらの手当は会社ごとに名称や内容が異なるため、規程上での定義があいまいになりやすい項目です。手当を規程に定める際は、支給対象となる従業員の条件、支給額や算定方法、支給されなくなる条件までを具体的に記載する必要があります。

たとえば無事故手当であれば、対象期間中に事故がなかった場合の支給額や、事故が発生した場合の取り扱いを明記しておきましょう。

歩合給・出来高給

歩合給は、売上額や運行回数、走行距離といった成果に応じて支給される賃金です。何を基準に歩合給を計算するのか、どのような算定式を用いるのかを明確にしておく必要があります。算定式があいまいなままでは、従業員自身が自分の賃金計算の妥当性を確認できません。

歩合給の対象となる売上の範囲や、控除する経費の有無なども含めて、具体的な数式や基準を規程に記載しておくことが望ましいです。給与明細と規程の内容が対応しているかどうかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。

時間外・休日・深夜の割増賃金

時間外労働、休日労働、深夜労働については、それぞれ法令に定められた割増率に基づいて割増賃金を計算する必要があります。運送会社では、この割増賃金の計算方法を規程に明記しておくことが特に重要です。見落とされやすいのが、歩合給部分に対する割増賃金の扱いです。

歩合給についても、時間外労働や深夜労働が発生した場合は、通常の労働時間の賃金算定額を基礎として割増賃金を計算する必要があります。歩合給だから割増計算が不要になるわけではない点を、規程上でも明確にしておかなければなりません。

賃金の計算期間・締日・支払日

賃金の計算期間や締日、支払日についても、規程に具体的に定めておく必要があります。たとえば「毎月末日締め・翌月25日払い」のように、期間と支払日を明記しておきましょう。
賃金は、労働基準法により毎月1回以上、一定の期日を定めて支払うことが求められています。

運送業は月をまたぐ運行が発生することもあるため、対象期間の考え方についても規程上で整理しておくと安心です。

運送会社ならではの賃金制度をチェック!

運送会社の賃金制度は、大きく固定給型・歩合給型・併用型の3つに分けられます。それぞれの特徴を理解したうえで、自社に合った制度を選ぶ必要があります。

職場認証制度の詳細に関しては「働きやすい職場認証制度とは?取得メリット・認証基準・申請方法をわかりやすく解説」を併せてご覧ください。

固定給型

固定給型は、基本給を中心として毎月一定額の賃金を支給する仕組みです。収入が安定しやすく、従業員にとっても見通しを立てやすい制度といえます。一方で、時間外労働が発生した場合には、固定給とは別に適切な割増賃金を計算して支払わなければなりません。

固定給に残業代が含まれているかのような曖昧な運用をしてしまうと、未払い残業代のリスクが高まります。固定給型を採用する場合も、時間外労働の計算方法を規程で明確にしておくことが不可欠です。

歩合給型

歩合給型は、売上額や運行回数、走行距離といった成果に応じて賃金が変動する仕組みです。成果を賃金に反映しやすい一方で、賃金額の変動幅が大きくなりやすい特徴があります。歩合給型を採用している場合でも、労働時間の管理や割増賃金の支払いが不要になるわけではありません。

歩合給であっても、時間外労働や深夜労働が発生すれば、法令に基づいた割増賃金の支払い義務が生じます。成果主義の要素を取り入れつつも、労働時間管理を徹底する体制を整えておく必要があります。

固定給・歩合給の併用型

併用型は、「基本給+売上や運行実績に応じた歩合給」のように、固定部分と変動部分を組み合わせた仕組みです。運送会社では、この併用型を採用しているケースが多く見られます。

どこまでが基本給で、どこからが歩合給なのかが不明確だと、割増賃金の計算基礎を誤ってしまうおそれがあります。両者の区分と算定方法を明確にしたうえで、給与明細にも対応関係が分かるよう記載しておくとよいでしょう。

運送会社の賃金規程では何に注意する?

賃金規程を作成する際は、歩合給や手当と残業代の関係、賃金控除のルールなど、いくつかの注意点があります。ここでは特に見落とされやすいポイントを解説します。

歩合給でも残業代の支払いは必要となる

「歩合給を支払っているのだから、別途残業代を支払う必要はない」という認識は誤りです。前述のとおり、歩合給を採用している場合でも、時間外労働が発生すれば、法令に沿った割増賃金を支払う義務があります。

歩合給部分の割増賃金は、通常の労働時間の賃金算定額をもとに計算する必要があります。
基本給に対する割増賃金の計算だけを行い、歩合給部分を計算から除外してしまうと、未払い賃金になりかねません。規程には、歩合給を含めた割増賃金の計算方法を具体的に明記しておくことがポイントです。

固定残業代は通常の賃金と明確に区分する

固定残業代を導入する場合は、基本給と固定残業代の金額を分けて記載し、固定残業代が何時間分の時間外労働に相当するのかを明確にすることが必要です。区分があいまいなまま固定残業代を運用すると、固定残業代部分が法定の割増賃金に満たないと判断され、未払い残業代が発生するリスクがあります。

また、実際の時間外労働時間が固定残業代の対象時間数を超えた場合には、超過分を別途支払わなければなりません。

各種手当を残業代の代わりにしない

運行手当や職務手当などを支給しているからといって、それが残業代の支払いに代わるわけではありません。手当と残業代は、それぞれ異なる目的で支給される賃金です。

手当を残業代の代わりとして扱っていると、実際には未払い残業代が発生している状態になりかねません。規程には、各手当がどのような性質の賃金であるかを明確に記載し、時間外労働に対する対価ではないことを整理しておく必要があります。

賃金控除のルールを明確にする

税金や社会保険料といった法令で定められた控除以外を給与から差し引くことは、原則として労働基準法24条(賃金全額払いの原則)により認められていません。運送会社では、事故による損害費用や備品代などを控除するケースが見られますが、事故の弁償金や損害賠償金を給与から天引きすることは、労使協定があっても原則として違法となるため注意が必要です。

会社の判断だけで一方的に給与から天引きする運用は、賃金全額払いの原則に反するおそれがあります。やむを得ず控除を検討する場合は、対象となる費用の範囲や手続きについて、事前に社会保険労務士や弁護士へ確認し、個別の自由な意思に基づく同意書を取得するなど、民事上の手続きを経ることを推奨します。

運送会社の賃金規程に関するFAQ

ここでは、運送会社の賃金規程についてよく寄せられる質問に回答します。制度の見直しを検討する際の参考にしてください。

歩合給だけの給与体系でも問題ありませんか?

歩合給のみの給与体系であること自体が、直ちに違法となるわけではありません。ただし、最低賃金を下回らないよう賃金を計算することがポイントです 。また、時間外労働や休日労働、深夜労働が発生した場合には、適切な割増賃金を支払う義務があります。

無事故手当や愛車手当は賃金規程に記載すべきですか?

継続的に支給する手当であれば、対象者や支給額、支給条件、不支給となる条件などを賃金規程に明確に記載しておくことが必須です。事故の有無などによって支給額が変動する手当も、運送会社では多く採用されています。

固定残業代を導入する場合は何を記載すべきですか?

固定残業代を導入する際は、固定残業代の金額や対象となる時間数、通常の賃金との区分を規程に明確に記載すべきです。区分が不明確なままでは、固定残業代としての効力が認められないこともあり得ます。

実際の時間外労働に対する割増賃金額が固定残業代の金額を上回った場合は、その超過分を別途支払う必要があります。

事故や交通違反の費用を給与から天引きできますか?

会社が一方的に給与から費用を天引きできるわけではありません。労働基準法では、賃金は全額を支払うことが原則とされています。法令で認められた税金や社会保険料以外の控除を行う場合でも、事故の弁償金や損害賠償金は労使協定で控除できる項目に含まれないため、原則として天引きは認められません。

特に、事故による損害額をそのまま全額給与から差し引く運用は、賃金全額払いの原則との関係で問題となりやすいため注意が必要です。控除を行う場合は、事前に社会保険労務士や弁護士へ確認しましょう。

賃金規程を見直すときは何から確認すればよいですか?

まずは、現在の賃金規程と雇用契約書、給与明細、実際の給与計算方法を照合することから始めましょう。基本給、歩合給、各種手当、固定残業代、割増賃金といった項目について、規程上のルールと実際の支給方法にズレがないかを確認することが重要です。

特に、割増賃金の計算基礎に含めるべき手当を除外していないかどうかは、見落とされやすいポイントといえます。必要に応じて、専門家に相談しながら照合作業を進めると効率的です。

賃金規程を変更するときに従業員の同意は必要ですか?

賃金規程の変更は、従業員との合意によって行うのが原則的な方法です。ただし、すべての変更において個別の同意が必須というわけではありません。

就業規則によって従業員に不利益となる労働条件の変更を行う場合は、変更の必要性や不利益の程度、変更後の内容の相当性などに照らして、合理性が認められる必要があります。あわせて、変更後の規程を従業員へ周知することも求められます。不利益変更を行う際は、慎重に手続きを進めることが重要です。

就業規則と賃金規程は分けて作成できますか?

賃金に関する事項を、就業規則本体とは別に「賃金規程」として作成することは可能です。ただし、賃金規程も就業規則の一部として扱われる点には注意が必要です。

就業規則の届出義務がある事業場では、賃金規程についても作成・変更のたびに届出が必要になります。規程を分けて作成する場合でも、両者の内容に矛盾が生じないよう整合性を保つことが重要です。

運送会社の賃金規程の作成・見直しはコモンコムに相談しよう!

運送会社の賃金規程には、基本給や各種手当、歩合給、割増賃金の計算方法、締日・支払日など、賃金に関わるルールを漏れなく定めておく必要があります。特に、歩合給や固定残業代の扱いをあいまいにしておくと、実際の支給額と規程の内容にズレが生じ、未払い賃金や労務トラブルへと発展しかねません。規程の内容と実際の給与計算を一致させたうえで、法改正や実態の変化にあわせて定期的に見直す体制を整えておくことが大切です。

株式会社コモンコムは、運送・倉庫・輸出入業向けの業務効率化システム「LOGI-Cube」を提供しています。運送管理に特化した「LOGI-Cube EXPRESS」では、ドライバーごとの実績管理や、運転者台帳システムにより運転者の基本情報や資格、適性診断、事故歴などをまとめて一元管理でき、法定台帳の整備や日々の労務管理をしっかりと支えます。

全国300社以上への導入実績を持ち、賃金や労務にまつわる業務の効率化を検討している運送会社にとって、心強いパートナーとなるはずです。ぜひ一度、公式サイトより導入事例をご覧ください。

>株式会社コモンコム公式サイトはこちら

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次