働きやすい職場認証制度とは?取得メリット・認証基準・申請方法をわかりやすく解説

トラック・バス・タクシーなどの自動車運送業界では、慢性的なドライバー不足や長時間労働の問題が年々深刻さを増しています。そのような状況を打開する手段として、国土交通省が令和2年度に創設したのが「働きやすい職場認証制度」です。

本記事では、制度の概要から認証区分・評価項目・申請方法・関連制度との違いまで、運送事業者の担当者がすぐに動き出せるよう解説します。職場の環境改善に、ぜひお役立てください。

目次

 働きやすい職場認証制度とは

「働きやすい職場認証制度」とは、自動車運送事業者の労働環境改善への取り組みを国が「見える化」し、求職者の就職促進と事業者の人材確保を後押しする公的な認証制度す。職場環境改善への取り組みを第三者が評価・認証することで、求職者に対して安心感を与え、人材確保につなげることを目的としています。

働きやすい職場認証制度の概要

働きやすい職場認証制度は、令和2年度に国土交通省が創設した制度で、正式名称を「運転者職場環境良好度認証制度」といいます。トラック・バス・タクシー事業者における職場環境改善への取り組みを評価・認証し、その内容を求職者に向けて可視化することが主な目的です。

審査に合格した事業者はオレンジ色の認証マークを取得でき、車両や求人票、自社ウェブサイトなどに表示することが可能です。厚生労働省との連携により、ハローワークの求人票にも認証マークが表示される仕組みが整備されており、求職者が一目で認証事業者を識別できるようになっています。

制度は当初「一つ星」のみで運用されていましたが、令和4年度から「二つ星」、令和5年度から「三つ星」が追加されました。段階的な認証区分を設けることで、事業者がより高い水準の労働環境整備へ継続的に挑戦できる仕組みになっています。

認証対象となる事業者

認証の対象となるのは、トラック事業者(一般貨物自動車運送事業者など実運送を行う事業者)、バス事業者(乗合・貸切の両方)、タクシー事業者などの自動車運送事業者です。ただし、申請にあたっては一定期間の事業実績を有していることが申請要件とされており、具体的な要件は最新の申請案内から確認が必要となります。

申請は営業所単位での受付が基本であり、複数の営業所をまとめて申請することも可能で、事業規模や体制に応じた申請ができます。

審査では、法令遵守の状況や労働環境改善に向けた具体的な取り組みが確認されます。前提として就業規則の整備や36協定の締結など、労働関係法令への対応が求められることも押さえておきましょう。

 働きやすい職場認証制度の目的

この制度が創設された背景には、運送業界が抱える構造的な課題があります。人材不足・イメージ問題・長時間労働といった複合的な課題を解決するために、国と業界が一体となって取り組む手段として生まれた制度なのです。

運転者不足の解消につなげるため

トラック・バス・タクシー業界では、近年ドライバー不足が急速に深刻化しています。EC市場の拡大による物流需要の増加に加え、2024年問題(時間外労働の上限規制の適用)による人手不足の加速が追い打ちをかけており、採用が思うように進まない事業者は少なくありません。

認証を取得することで、求職者への積極的なアピールはもちろん、取引先からの信頼向上や企業イメージの改善にもつながります。

労働環境改善の取り組みを見える化するため

運送事業者が日々行っている法令遵守の徹底や労働時間管理、有給休暇の取得促進などの取り組みは、社外からは見えにくいものです。求職者が企業の内情をなかなか把握できないという課題が、採用のミスマッチや早期離職につながることもあります。

働きやすい職場認証制度では、こうした取り組みを第三者機関が審査・認証することで、「安全・安心な職場環境を整備している事業者」であることを誰にでもわかる形で示せるようになります。

求職者が安心して応募できる環境を整えるため

運送業界に関心を持つ求職者の多くは、「拘束時間が長い」「体力的な負担が大きい」「なかなか休めない」といった不安を抱えている傾向があります。こうしたマイナスイメージが払拭されないままでは、業界全体への就職促進も思うようには進みません。

認証マークを取得した事業者は、一定基準を満たした職場環境を整えていることが公的に証明されるため、求職者にとっての安心材料となり得ます。ハローワークの求人票や求人サイトに認証マークが表示されることで、求職者がより積極的に応募を検討できるようになるでしょう。

運送業界全体のイメージ改善を図るため

「きつい・危険・休めない」といったネガティブなイメージは、運送業界への入職を阻む大きな障壁となっています。

国土交通省が目指しているのは、この制度を通じて働き方改革や職場環境改善に前向きな事業者を増やし、業界全体の魅力向上と持続可能な人材確保の実現です。認証事業者が増えることで「運送業界は変わってきている」という社会的認知が広まり、より多くの人材が業界に関心を持つ好循環を生み出す狙いもあるのです。

 働きやすい職場認証制度の認証区分

認証制度には「一つ星・二つ星・三つ星」の3段階が設けられており、各段階で求められる取り組みのレベルが異なります。認証マークは共通デザインをベースに、星の数によって区分が示される仕組みです。

一つ星認証

一つ星は、法令を遵守しながら、労働条件や労働環境の改善に向けた基本的な取り組みを一定程度実施していると認められた事業者に与えられる認証です。認証の対象となる評価分野は法令遵守等・労働時間・休日・心身の健康・安心・安定・多様な人材の確保・育成」の5分野で、各分野の基本要件を満たすことが求められます。

初めて認証を申請する事業者はこの一つ星からのスタートとなります。「自主性・先進性等」の第6分野については、一つ星の段階では合否に影響しない参考点として点数化されるため、まずは5分野の基本要件を整えましょう。登録証書の有効期間は2年間、継続申請によって認証を維持していくことになります。

二つ星認証

二つ星は、一つ星の基本要件を上回る水準で労働条件・職場環境の改善に取り組んでいる事業者が対象です。法令が定める基準を超えた取り組みが積極的に評価され、「自主性・先進性等」の第6分野も審査の対象として加わります。

具体的には、法定水準を超える有給休暇の付与や育児・介護支援制度の充実、健康増進への追加的な取り組みなど、より充実した職場環境整備が評価されます。二つ星を取得することで、求職者や取引先から「一段上の職場環境を整えている事業者」として認識されやすくなり、採用活動における差別化効果がさらに高まります。

三つ星認証

三つ星は、法令を上回る取り組みを十分に実施し、継続的な改善体制が組織的に整っている事業者に与えられる最上級の認証です。一つ星・二つ星の評価項目に加え、「労働時間・休日」「心身の健康」「多様な人材の確保・育成」の3分野で追加項目が審査対象となります。また、働きやすい職場実現のための方針・課題・目標・行動計画・体制整備などを記載した書面も提出が必要です。

PDCA(Plan(計画)、Do『実行』、Check『測定・評価』、Action『対策・改善』のプロセスを循環させ、マネジメントの品質を目指す取り組み)による改善活動が適切に機能しているかどうかも審査されます。三つ星は単なる取り組みの実施状況だけでなく、組織的・継続的な改善の仕組みそのものが評価される認証段階といえます。

ステップアップの流れ

認証制度は「一つ星→二つ星→三つ星」の順で段階的に取得する仕組みになっています。二つ星や三つ星への申請は一つ星の認証取得が前提条件となるため、まずは基本要件を満たして一つ星を取得することから始める必要があります。

一つ星を取得した後は、有効期間(2年間)内に二つ星以上への申請が可能です。上位の認証取得に向けて、労働環境の継続的な改善と記録の蓄積を進めながら、段階的にレベルアップを図っていく進め方が実務上も取り組みやすいでしょう。

なお、2025年4月1日からは一つ星・二つ星が通年申請に移行しており、年度スケジュールに縛られずに申請できるようになっています。

 働きやすい職場認証制度の評価項目

審査では6つの分野にわたる評価項目を通じて、事業者の取り組みが確認されます。どの分野も人材確保・定着に直結するテーマであり、認証取得と職場改善を同時に進める好機として捉えることができます。

法令遵守等の取り組み

この分野では、労働基準法や改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)への遵守状況、安全運行管理体制の整備状況などが確認されます。具体的には、点呼記録や運転日報の適切な管理、運行管理者の選任状況、コンプライアンス教育の実施体制などが審査の対象です。

これらは運送事業者として当然求められる基本事項ですが、書類の整備状況や記録の継続性まで含めて確認されるため、日常的な管理体制を見直すきっかけにもなります。特に過去1年間の法令違反歴は申請要件に影響するため、日頃からのコンプライアンス徹底が認証取得には不可欠です。

労働時間・休日に関する取り組み

長時間労働の抑制や適切な休日の確保、有給休暇の取得促進といった取り組みがこの分野の主な評価対象です。拘束時間の適正管理、シフトの工夫による休日取得率の向上、時間外労働の削減に向けた具体的な施策の実施状況などが審査されます。

2024年問題により年間960時間の時間外労働上限が適用された現在、こうした取り組みは法令対応としても避けられません。認証取得に向けた整備を進めることが、法令遵守と採用強化の双方に同時に寄与するという点で、経営上の優先課題として位置づけられます。

心身の健康に関する取り組み

健康診断の実施管理、ストレスチェックの運用、過労防止対策など、運転者の心身の健康を維持するための施策が評価されます。ハラスメント対策や相談窓口の設置、メンタルヘルス支援の取り組みも確認項目に含まれており、安全な運行を支える基盤として体系的な健康管理体制が求められます。

長距離運転や夜間勤務など身体的負荷が高い業務に就くドライバーにとって、健康管理は個人の問題にとどまらず、交通事故防止にも直結する重要テーマです。事業者として組織的に取り組む姿勢を示すことが、求職者や取引先からの信頼にもつながるでしょう。

安心・安定して働ける環境整備

福利厚生の充実、事故防止対策の整備、安定した雇用・収入を確保するための制度整備などがこの分野の評価対象です。賃金制度の透明化や計算ルールの明示、社内相談窓口の設置、定着率を高めるための職場環境づくりへの取り組みが問われます。

「入社してみたら話が違った」という早期離職を防ぐためには、雇用条件の可視化と公正な処遇が欠かせません。認証取得を通じてこの分野の整備を進めることは、入社後の定着率向上にも直結するため、採用コストの削減という観点からも非常に意義があります。

多様な人材の確保・育成への取り組み

女性・高齢者・未経験者など、多様な人材が働きやすい職場環境づくりへの取り組みがこの分野で評価されます。女性専用設備の整備、シニアドライバーへの配慮、未経験者向けの研修制度や資格取得支援など、幅広い人材が活躍できる受け入れ体制が審査対象す。

育成の仕組みとしては、入社後の研修プログラム、資格取得費用の補助制度、キャリアパスの整備などが具体例として挙げられます。特に三つ星ではこの分野に追加項目が設けられており、組織的な人材育成計画の策定・実施状況まで確認されるため、段階的な取り組みが求められます。

 働きやすい職場認証制度の申請方法

認証取得に向けては、書類準備から申請・審査・登録証書発行までの段階的なプロセスがあります。先程も記載しましたが、2025年4月以降は一つ星・二つ星が通年申請に対応したため、事業者のペースに合わせた申請計画が立てやすくなっています。

申請から認証取得までの流れ

申請の第一歩は、公式ウェブサイトで公表されている申請案内書(「一つ星・二つ星」用と「三つ星」用で別冊)を取り寄せて内容を確認することです。申請案内書には認証項目の詳細、必要書類のリスト、記入例などが掲載されており、準備の指針として欠かせません。

書類の準備が整ったら、電子申請ポータルまたは郵送で日本海事協会へ書類を提出します。書類不備がなく審査が順調に進む場合、申請受付から登録証書発行までは、一般的に数か月(目安として約4か月程度)かかります。

審査では書面審査が基本ですが、疑義が生じた場合や三つ星の場合には対面審査も実施されます。登録料の支払い確認後、概ね3週間程度で登録証書が発行され、公式ウェブサイトへの掲載も同時に行われます。

必要書類と準備するもの

申請に必要な提出書類は主に4種類で、審査申込書(様式A)、本申請に係る本社・営業所一覧(様式B)、認証項目及び参考項目についての自認書(様式C)、認証項目の提出書類6種(様式D-1〜D-6)で構成されます。これらは公式ウェブサイトからダウンロード可能です。

提出書類に加え、事業所内に保管が必要な「保管書類」も定められており、就業規則の本紙や健康診断の記録、36協定の写しなどが該当します。保管書類は郵送不要ですが、対面審査時に確認される場合があるため、日頃から整備・保管しておくことが大切です。

就業規則は従業員10人未満の事業者でも認証取得には必要になるため、未整備の場合はこの機会に作成しておくと良いでしょう。

審査の進み方と確認される内容

提出された書類をもとに書面審査が実施され、結果は審査委員会での審議を経て確定します。評価対象となる5分野(一つ星)もしくは6分野(二つ星以降)の各項目について、申告内容と提出書類の整合性が確認されます。

法令遵守状況は事前スクリーニングとして国土交通省からの情報も参照されるため、過去の行政処分歴がある事業者は事前に事務局へ相談することがおすすめです。対面審査は審査過程において必要に応じて実施されるほか、虚偽申請が疑われる場合などにも行われます。審査合格後は審査結果通知書が送付され、登録料の支払いをもって登録証書の発行に進む流れです。

申請時によくあるミスと注意点

申請時に特に多いのは、添付書類の不足や自認書の記載漏れ、本社と営業所の情報不一致といった書類上のミスです。郵送申請の場合、A4サイズ統一・「申請書類在中」の封筒記載など細かな指定事項があるため、送付前にチェックリストを使って確認しましょう。

審査料の振込期限にも要注意で、請求書発行後の2週間以内に入金が確認されない場合は申請がキャンセルとなります。また、継続申請の更新期限を忘れてしまうケースもあるため、登録証書の有効期限は必ずカレンダー等に記録しておくことをおすすめします。

社内ルールが未整備のまま申請すると審査差し戻しになることもあるため、就業規則や労働時間管理ルールの整備を申請準備と並行して進めることが大切です。

 働きやすい職場認証制度と関連制度の違い

運送事業者が取得を検討する認証制度や推進運動には、ほかにも種類があります。それぞれの制度の違いを正確に理解することで、自社に本当に必要な取り組みを選択することができます。早速見ていきましょう。

Gマークとの違い

Gマーク(安全性優良事業所)は、全日本トラック協会が実施する「輸送の安全性」を評価する認定制度で、トラック事業者の事業所単位を対象としています。評価項目は法令遵守状況・事故や違反の状況・安全性向上への取り組みの積極性という3テーマ38項目で構成され、100点満点中80点以上で認定されます。

一方、働きやすい職場認証制度はトラックに加えてバス・タクシーも対象となっており、評価の焦点は「運転者が働きやすい職場環境の整備」にあります。労働時間管理・健康管理・人材育成・多様な人材の活用など、従業員側の視点からの職場改善が主な評価軸です。

安全輸送の信頼を荷主へアピールしたい場合はGマーク、求職者への採用アピールや職場環境の改善を前面に出したい場合は働きやすい職場認証制度を優先すると良いかもしれません。

ホワイト物流推進運動との違い

ホワイト物流推進運動は、国土交通省・厚生労働省・経済産業省が連携して推進する、物流業界全体の長時間労働解消・人手不足改善を目的とした「自主的な取り組み運動」です。運送事業者だけでなく荷主企業も参加対象となり、両者が協力して物流現場の慣行を見直すことが特徴となります。

これに対し、働きやすい職場認証制度は自動車運送事業者自身の職場環境改善の取り組みを第三者機関が審査・認証する制度であり、認証マークによる対外的なアピール可能な点が大きな違いです。

ホワイト物流推進運動は業界全体の慣行改善に向けた協力体制づくりを目的とし、働きやすい職場認証制度は個々の事業者の取り組みを認証・可視化する制度と整理するとわかりやすいでしょう。

健康経営優良法人との違い

健康経営優良法人は、経済産業省が推進しており、従業員の健康管理・健康増進への戦略的な取り組みを評価する制度です。業種を問わず幅広い企業が対象であり、大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれています。

健康経営優良法人の評価項目は健康診断の受診率向上・メンタルヘルス対策・生活習慣病予防など、従業員の健康そのものに特化しています。一方、働きやすい職場認証制度はトラック・バス・タクシーなど自動車運送事業者のみが対象です。

運転者の労働時間管理・職場環境・人材育成・法令遵守など、運送業特有の視点で職場環境全体を評価する制度です。健康管理は評価分野の一部に含まれますが、働きやすい職場認証制度は健康にとどまらない幅広い職場環境改善をトータルで審査する点が異なります。

 働きやすい職場認証制度を活用して職場環境改善を進めよう

働きやすい職場認証制度は、トラック・バス・タクシー事業者が労働環境の整備状況を客観的に示す手段として、採用強化や人材定着、企業イメージ向上に向けた制度です。職場環境の改善を進めながら働きやすい職場認証制度の取得を検討している運送事業者の皆様には、業務管理の効率化と同時進行で取り組めるITツールの活用も有効です。

職場環境改善には、株式会社コモンコムが提供する運送・倉庫管理システム「LOGI-Cube(ロジキューブ)」の利用をおすすめします。運送管理システム「LOGI-Cube EXPRESS」を中心に、日報管理・配車支援・運転者台帳・車両台帳などの機能を必要に応じて組み合わせて使えるパッケージソフトです。

デジタコや給与システムなど外部ツールとの連携実績も豊富で、運転者の労務管理や稼働実績の把握を一元化することができます。

現場起点の使いやすい画面設計と充実したサポート体制が特長で、300社以上の物流企業への導入実績を持つコモンコムが、認証取得に向けた業務整備のパートナーとして業務効率化を力強くサポートします。まずはお気軽に資料請求やお問い合わせをご検討ください。

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