倉庫業を営んでいる業者様向けとして、世の中には数多くの倉庫管理システムが存在します。日々の入出庫を管理して在庫を把握したり、様々な関連帳票を印刷したり、ハンディターミナルなどの外部機器と連携してさらなる業務の効率化を図ったりなど、倉庫管理システムによって提供する機能は多岐にわたります。
中には入出庫の情報から保管料を計算して請求書まで発行できる機能を備えた倉庫管理システムもありますが、計算方法によっては対応できないというケースも稀にありますので、システム選定の際には注意が必要です。
ここからは営業倉庫における保管料の計算方法について記載していきます。
そもそも営業倉庫とは、物流サービスを提供する企業が所有・運営する倉庫で、他の企業から荷物を預かって保管・出荷するサービスを行っています。営業倉庫を利用することで、自社で倉庫を持つ必要がなくなり、物流コストや在庫管理の負担を軽減することができます。 しかし、営業倉庫を利用する際には、倉庫料と呼ばれる費用が発生します。倉庫料は、一般的に保管料と荷役料に分けられます。保管料とは、倉庫に荷物を預ける期間に応じて発生する費用で、荷物の種類や数量・サイズ・重量などによって異なります。一方、荷役料とは荷物の入出庫時に発生する費用で、作業量や作業時間などによって異なります。 営業倉庫における保管料の計算方法には、様々な種類がありますが、まず保管料算出の単位として代表的な以下の5つを紹介します。
個建てとは、預けたい荷物のサイズがほぼ均一である場合に用いられる計算方法で、荷物1個あたりの単価が設定されており、実際に倉庫に預けた個数に単価を掛けて保管料を算出します。
個建てのメリットとしては、荷物の数量が明確なため保管料の計算が簡単でわかりやすいという点です。対してデメリットとしては、荷物のサイズや形状が異なる場合は倉庫内に無駄なスペースが生じてしまうため効率が悪くなる可能性があるということです。
坪建て(坪貸し)とは、使用する坪数がベースとなる計算方法です。どのような荷物でも柔軟に対応可能で、メジャーな契約形態の1つと言えます。坪建ての契約には、都度使用した坪数分を請求する「使用坪契約」や、あらかじめ使用する坪数を算出してから坪数を固定する「固定坪契約」などがあります。1坪当たりの単価が定められており、その単価に使用した坪数を掛けて保管料を計算します。坪建てのメリットとしては以下のような点が挙げられます。
一方、デメリットは以下のような点が挙げられます。
物流業界では荷物を載せる板状の荷役台をパレットと呼びますが、一般的には、フォークリフトの差し込み口がついていて、平らな形のものを指します。パレット建てとは、このパレット1つあたりで保管料を算出する方法です。預ける荷物をパレット単位で大量に出荷したりする場合は、このパレット建てが利用されることもあります。パレット建てのメリットは、荷物が既にパレットに乗っているため、荷役作業が効率化されるという点です。
一方デメリットは、パレットに乗せる荷物の重量や高さに制限があるため、柔軟性に欠ける可能性がある、また上部に余剰スペースが発生することがあるという点です。
重量建てとは、商品サイズではなく預けた荷物の重量に応じて保管料を算出する方法で、液体や穀物など荷物の重量が大きく変動する場合や、サイズに比べて重量が大きくなる場合に適しています。重量建てのメリットは重量の正確な計測がしやすく保管料の計算がわかりやすいという点ですが、倉庫によっては耐荷重制限により保管できる量に制限がある場合もあるため注意が必要です。
容積建てとは、預けた荷物の容積(縦×横×高さ)に応じて保管料を算出する方法で、一般的には海外からの輸送など、コンテナを使用した荷物の場合によく用いられます。1立米(m3)当たりの単価が設定されており、その単価に預けた荷物の総容積を掛けて保管料を計算します。容積建ては先にも述べたようにコンテナなどを使用した荷物に利用されますが、コンテナはある程度サイズが一定に決まっているため、坪建てやパレット建てで生じる無駄なスペースが発生しにくく、効率的な保管が可能な点がメリットと言えます。一方でコンテナの移動には特別な設備や操作が必要となるため、保管料だけでなく設備使用料や作業料などの費用が別途発生する可能性もあります。
ここまで保管料の計算単位について述べてきましたが、計算単位とは別に、保管料を算出する計算方法が存在します。今回はメジャーな計算方法を3つご紹介します。
一期制とは、1ヶ月単位で保管料を算出する方法で、保管料は、「月初在庫数 + 月間入庫数」で求められます。複雑な計算式や日割り計算などが不要なため、保管料の計算が簡単でわかりやすいというメリットがあります。一方、在庫量が減っても保管料が変わらないことがデメリットと言えるため、一期制は入出庫があまり多くない在庫量が安定している商品や、入出庫のタイミングが不定期な商品に向いていると言えます。
二期制とは、1ヶ月を1日から15日までと16日から末日までの2つの期間に分けて保管料を算出する方法で、保管料は「上期保管積数 + 下期保管積数」で求められます。上期保管積数とは、「繰越在庫 + 上期入庫数」で求められ、下期保管積数とは、「中間在庫 + 下期入庫数」で求められます。以下に具体例を記載します。
この場合、各期の保管料は次のようになります。
以上のように下期の出庫数は当月の計算には影響せず、翌月の繰越在庫に影響するというのがポイントです。一カ月の保管料としては上期の「6,000円」と下期の「9,000円」を合計した「15,000円」となります。 二期制は、次に記載する三期制よりも入出庫のタイミングに左右されにくく、一期制よりは入出庫のタイミングに影響されるという特徴があります。主に冷凍・冷蔵倉庫で採用されること多い計算方法です。
三期制とは、物流業界における保管料の計算方法として最もポピュラーなもので、1ヶ月を「1日~10日」「11日~20日」「21日~末日」の3つの期間に分けて、倉庫の保管料を算出する方法です。保管料は、一期制、二期制と同じく「保管積数 × 保管料単価」で求められますが、区切りが多くなる(前期、中期、後期や1期、2期、3期など呼び方は会社によって様々)のが主な違いです。具体例は以下の通りです。
この場合、各期の保管料は次のようになります。
以上のように、一カ月の保管料としては1期の「5,000円」、2期の「4,000円」、3期の「7,000円」を合計した「16,000円」となります。 三期制では一期制や二期制に比べると入出庫のタイミングに影響されやすいという特徴がありますが、タイミングをうまく調整することで保管積数を抑えることができるため、同じ入出庫回数であっても三期制の方が保管料が安くなるというメリットがあります。
以上が、営業倉庫における倉庫料の計算方法の例です。多種多様な計算方法があるため、取り扱う荷物の種類や自社の設備を考慮したうえで、利益が最大となる計算方法を選択することが重要です。また、倉庫管理に特化したシステムを使用する場合は、自社の保管料計算方法に対応しているのか、対応していないのであればカスタマイズはできるのかなどにも注意して選定しましょう。
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