いよいよ暦上も2024年に突入し、「2024年問題」も待ったなしの状況となってきました。大・中・小の規模にかかわらず物流に関連する各企業も軒並み対策を迫られていますが、先導していく上で政府としても以下のような法律や指標を順次発表しています。
2024年問題対策の一つとして「運賃の見直し」が注目されていましたが、これまでも実運送事業者に正当な対価が支払われるように、2020年に創設された「標準運賃」というものが存在しています。しかし実際にはそれとはかけ離れた実勢運賃での輸送が大半を占めていると言われるのが実情です。
国土交通省はこうした状況を打開すべく、2023年8月の第一回「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」からスタートし、10月の第二回検討会での提言素案の整理を経て、12月にこれまでの議論を踏まえた提言を以下のような内容で公表しました。
それぞれ詳しく説明します。
運賃の適正な転嫁を図り、運送業者と荷主の公平な取引を促進するために、運賃表を改定し平均約8%の運賃引き上げを目指すとともに、原価に占める燃料費を120円に変更して燃料サーチャージも120円を基準に設定するよう指摘
下請けの運送業者に対する適正な報酬を確保し、業界全体の健全な運営を目指すために、「下請け手数料」を設定し、荷主と運送事業者の双方が運賃・料金等を記載した電子書面を交付することを明記
運賃や料金の設定に柔軟性を持たせ、物流の円滑な運営を支援するために、共同輸送等を念頭にした「個建運賃」の設定や、リードタイムが短い運送の際の「速達割増」、有料道路を利用しない場合の長時間運転に伴う割増を設定することを提案
今後はこれらの提言をもとに、今後運輸審議会への諮問を経て、標準運賃・標準運賃約款が改正される予定です。
令和6年2月13日、2024年問題に対応し、物流の持続的成長を図るため、以下のような「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
この規制は、荷主と物流事業者が物流の効率化を図るための措置を講じることを努力義務としています。 効率化を促進するためには、具体的な目標や手段が必要です。そのために国が明確な判断基準を設けることで、 業界全体の基準を統一し、物流プロセスを最適化することが狙いです。
物流効率化の取り組みは、単に計画を立てるだけではなく、その進捗状況を定期的に評価し、必要に応じて指導や助言が必要となります。 さらに、透明性を高めるために、調査結果や取り組みの成果を公表することで、普及を促進します。
この方針は、特に大規模な物流を扱う特定事業者に対して、その影響力と責任を鑑み、中長期的な物流効率化計画の策定とその実施状況に関する定期報告を義務付けます。 計画に沿った効果的な取り組みが確認できない場合、国は勧告や命令を出すことで、事業者に対して改善を促します。
元請運送事業者は、下請事業者の名称や運送内容、実際の運送業者や何次の下請かを明記した管理簿を作成し、 1年間保存することが義務付けられます。 これは、運送業界における多重下請の状況を可視化し、取引環境の改善を目的としています。
荷主と運送事業者は契約時に運賃以外の役務がある場合、その内容や対価を記載した書面を交付することも義務付けられており、 荷造りや仕分けなどの付帯業務に対する適正な対価が保証されるよう取り組まれています。 運送業界の健全な取引環境の構築と、下請け事業者の保護が図られています。
軽トラック事業者は、運送業務を安全かつ適切に行うために必要な法令知識を確実に理解し遵守することが求められます。 事業者は管理者を選任し、その管理者が貨物自動車運送事業に関連する講習を受講することが義務付けられることになります。 また、事故が発生した場合には、速やかに詳細な報告を行うことも求められます。これらの措置により、 軽トラック事業の安全性の向上と法令遵守が促進され、事故発生時の迅速な対応が可能となります。
この法律案は、物流業界に以下のような影響を与えることが予想されます。
総じて、この法律案は物流業界の効率化と安全対策を促進し、持続的な成長を支えることを目指しています。
2024年問題を乗り越えるために活発な動きや様々な提言が見られる一方で、現時点では強制力のある法制度という段階までは至っていません。これまでも標準運賃は存在していたものの実勢運賃とは乖離してしまっていた現実を考えると、抜本的な改革を目指すのであれば法制度等による一定の拘束力が必要とも考えられ、今回閣議決定された法律案もその一つと言えるでしょう。
これからも検討会の進捗や政府の動きに注目しつつ、物流業界が円滑な運送を実現するためにさらなる改善策を模索していくことが求められています。
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