物流業界において「白トラ」と呼ばれる白ナンバーをつけたトラックの存在は当たり前となっていますが、法的位置づけや正しい使用方法については誤解が多く存在しています。 白トラで自社の荷物を運ぶだけであれば完全に合法です。しかし、運送業者のように他社の荷物を有償で請け負って運ぶことはできません。
使用用途だけでなく、税金や保険料など違いが大きいため、ニーズに合わせた適切な選択が重要となるでしょう。違法のまま運送を行った場合、重い罰則があることも認識しておく必要があります。
この記事では白トラの基本的な特徴から緑ナンバーとの違い、違法となるケースや例外的に認められる状況まで詳しく解説します。
白トラとは 「白ナンバー」をつけた自家用トラックのことです。基本的には会社や個人が自分の荷物を運搬するために使うことが前提です。その反対で、営利目的で他者のものを運ぶ場合には「緑ナンバー」を取得しなければなりません。
白トラは初期費用や維持費が安いため、物流業界では自社商品の輸送などに限定して使われることが多いです。しかし、営利目的で運送業務を行うと違法行為となるため、使う目的を明確に理解しなければなりません。
2つのナンバーのトラックは、法的な位置づけから日常的な管理方法まで様々な違いがあります。以下の5つの観点から2つの違いを詳しく解説します。
これらの違いを理解することで、最適なトラックの選び方が見つかるでしょう。
2つのナンバーのトラックの違いは使い方です。白トラは「自家用」に限定されており、自社の荷物を運ぶ際に使えますが、他社の荷物を有償で運ぶことはできません。これに対して 緑ナンバーのトラックは「事業用」です。運送業として有償で他社の荷物を運んだり、貨物の運送を請け負ったりする場合に使えます。
緑ナンバーを取得するためには、国土交通省から許可を得る必要があり、様々な基準や要件をクリアしなければなりません。このように、用途によって明確に区分されています。
安全性を確保するための点検整備期間も大きく違います。白トラの場合、車両総重量によって異なります。 車両総重量8トン未満の白トラで6ヶ月ごとの点検整備が義務付けられていますが、 車両総重量8トン以上になると3ヶ月ごとに点検整備しなければなりません。
一方、緑ナンバーは車両総重量に関わらず、一律で3ヶ月ごとに点検整備しなければなりません。これは事業用として使われることが多く、安全面で求められる水準も高いためです。定期的な点検整備を怠ると、車両の故障や事故のリスクが高まるだけでなく、道路運送車両法違反として罰則の対象となる可能性もあります。安全運行のためにも、法定点検は必ず規定通りに実施することが不可欠です。
安全運転管理の一環として、現在ではアルコールチェックが義務ですが、義務化された時期に違いがあります。 緑ナンバーのトラックは、2011年5月からアルコールチェックが義務化されました。事業用トラックの事故防止対策として、早くから厳格な管理が求められてきました。これに対して、 白トラのアルコールチェックが義務されたのは比較的新しく、2022年4月の道路交通法改正によって実施されています。
現在では、一定台数以上の車両を保有する事業所の安全運転管理者は、運転者の業務前後にアルコール検知器を使用したチェックを実施し、結果を1年間保管することが義務付けられました。このように安全対策の面でも緑ナンバーのトラックは先行して厳格な管理体制が導入されており、白トラにも段階的に同様の安全基準が適用されています。
2つのナンバーのトラックでは、負担する税金の金額にも大きな違いがあります。 一般的に白トラの方が税金の負担が大きい違いがある部分としては、毎年4月1日時点での所有者に課される地方税の「自動車税」と、車検時に車両の重量などに応じて徴収される「自動車重量税」があります。
例えば、最大積載量3トン超〜4トン以下のトラックの場合、白トラでは20,500円ですが、緑ナンバーだと15,000円と約27%も自動車税が安いです。また、同じ積載量では、白トラが16,400円であるのに対し、緑ナンバーは10,400円と約37%も自動車重量税に差があります。このように、 緑ナンバーのトラックは税制面での優遇措置があり、長期的に見ると白トラよりもコスト面で有利になる場合が多いです。税金面での違いは保有台数が多くなるほど影響が大きくなるため、事業計画を立てる際の重要な検討材料となるでしょう。
白トラと緑ナンバーのトラックでは、任意保険の保険料も大きな違いがあります。 緑ナンバーのトラックの保険料は白トラに比べて1.5〜2倍程度高く設定されていることが多いです。これは、事業用として使用される緑ナンバーのトラックのほうが、走行距離が長く使用頻度も高いことから、事故リスクが高いと判断されるためです。
また、保険の選択肢にも違いがあります。 白トラの場合は一般的な自動車保険から選ぶことができますが、 緑ナンバーのトラックの場合は特定の法人向け自動車保険に加入する必要があるため、選択できる保険会社が限られています。さらに、事業用であることからリスク評価も厳しくなりやすく、保険料率の設定も高めになりやすいです。
そのため、緑ナンバーのトラックを運用する際には、保険コストを事業計画にしっかりと組み込む必要があります。一方で、白トラは保険料の面では比較的負担が軽く、この点はメリットが大きいと言えるでしょう。
白トラ自体は違法ではなく、使用方法によっては違法となる可能性があります。「白トラの業者を見かけるけど、本当に違法なの?」「個人事業主なら白トラでの運送は認められるの?」など、多くの疑問をお持ちの方も多いでしょう。ここでは、白トラが違法となるケースや例外的に認められる場合について詳しく解説します。
まず押さえておきたいのは、白トラ自体は違法ではありません。白トラは自家用車であり、自社の荷物や製品を運ぶために使用する分には何の問題もありません。
例えば、農家が自分の収穫物を市場に運ぶ場合や、工務店が自社の資材を現場に運ぶ場合など、自分の荷物を自分で運ぶ目的であれば、白トラの使用は適法ではないです。つまり、休憩を与えなければなりません。 自家用車としての使用であれば完全に合法です。ただし、有償で他者の荷物を運ぶなどの事業目的として使用した時点で、違法行為に該当します。
白トラを使って他者の荷物を運び、対価として運賃を受け取る行為は違法行為です。 貨物自動車運送事業法では、運送業を営むためには国土交通大臣の許可を受け、緑ナンバーまたは黒ナンバーを取得することが義務付けられています。
つまり、「自社の荷物を運ぶ」以外の目的で白トラを使用し、運賃による利益を得ることは法律違反です。たとえ一時的な依頼であっても、対価を受け取る形で白トラを使用することは認められていません。 違反した場合は罰則の対象となり、事業停止命令や罰金などの処分を受ける可能性があります。
また荷主所有の白トラを借りて運転するケースも、請負業と判断される場合もありますが、 基本的にはグレーゾーンでしょう。万が一事故が発生した際に、捜査の過程で違法行為が発覚する可能性があります。 個人事業主であっても、運送業を行うなら正規の手続きを経て緑ナンバーを取得することが法令遵守の観点から必要となるのです。
白トラでの運送業は基本的に違法ですが、例外的に認められるケースもあります。最も代表的な例が引越し業者の繁忙期における特例です。 この特例は期間限定かつ事前申請が必須であり、通常時は認められていません。他の業種では基本的に同様の特例はなく、運送業を行う場合は必ず緑ナンバーの取得が必要です。この点は物流業界で働く方にとって重要な知識となるでしょう。
ただし、 3月15日から4月15日までの期間において、引越し業者は国土交通省への事前申請を行うことで、最大15日間に限り白ナンバーのレンタカーを使用した運送業務が認められています。 これは年度替わりの引越しシーズンにおける車両不足を補うための措置です。
白トラで運輸業をおこなうことは違法行為です。しかし、実際にどのような罰則が科されるのか詳細を知らない方も多いでしょう。罰則の対象は輸送者側だけでなく、荷主側にも影響があります。
ここでは、白トラで運輸業をおこなった場合に発生する具体的な罰則について、輸送者側と荷主側の両面から解説していきます。違法行為を未然に防ぐために、しっかりと理解しておきましょう。
白トラで運輸業をおこなった場合、輸送者側には厳しい罰則が科されます。具体的には貨物自動車運送事業法第3条1項および第35条1項の違反となり、「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」という罰則が課せられます。懲役と罰金の両方が科されることもあるため、リスクは高いと言えるでしょう。
さらに注意すべき点として、もし懲役刑になってしまった場合には、その後の事業展開にも大きな支障をきたします。 刑期を終えてから5年が経過するまでは欠格事由に該当するため、新規の運送業許可申請ができなくなってしまうのです。
つまり、一時的な利益を求めて白トラでの運輸業に手を染めると、将来的に正規の運送業を営むチャンスまで失ってしまう可能性があります。このような大きなリスクを背負ってまで、違法な運送業を行う価値はないと言えるでしょう。
白トラによる運送業者に依頼した荷主側に対しては、現状では直接的な法的罰則は規定されていません。しかし、だからといって荷主側にリスクがないわけではないことを理解しておく必要があります。
最も大きなリスクは企業イメージの著しい低下です。「違法業者と知りながら取引していた」という事実が発覚すれば、企業の社会的信頼は大きく損なわれます。現代社会では企業の社会的責任が重視されており、 コンプライアンス違反は消費者や取引先からの信頼喪失に直結します。また、SDGsなど持続可能な社会実現への取り組みが求められる中、法令違反業者との取引はステークホルダー全体に悪影響を及ぼす可能性が高いです。
たとえ直接的な罰則がなくとも、企業評価の低下、取引先からの信頼喪失、さらには消費者からのボイコットなど、事業継続に関わる重大なリスクがあることを認識しておきましょう。長期的な企業価値向上のためにも、しっかりとした事業を行っている運送業者との取引を検討してください。
運送業を行うためには緑ナンバーの取得が欠かせません。緑ナンバー取得には様々な条件を満たす必要があり、手続きも複雑ですが、社会的信用の獲得や事業拡大などの大きなメリットがあります。
一方で、コスト面や業務負担の増加などのデメリットも存在します。緑ナンバー取得の判断材料として、そのメリット・デメリット・要件について詳しく見ていきましょう。
緑ナンバーを取得することで得られるメリットは多岐にわたります。最も重要なのは、有償による運送事業を合法的に行えることです。白ナンバーでは他社製品を運送して利益を得ることはできませんが、緑ナンバーがあれば運賃や報酬を受け取って荷物を運べます。
また、無理のない運行計画の作成が欠かせません。
適切な運行計画を用意することで、緑ナンバーは国から認可を受けた証明となるため、社会的信用が大幅に向上します。これにより大企業との取引機会が増え、営業規模の拡大にもつながるでしょう。
お金の面では、緑ナンバーを持つことで金融機関からの融資が受けやすくなるメリットもあります。さらに、白ナンバーと比較して重量税や自動車税が安くなるため、多数の車両を保有する場合は税金面での負担軽減につながります。
従業員の側面では、緑ナンバー取得に伴う福利厚生の充実により、人材の確保や定着率の向上も期待できるでしょう。現代の優秀な人材は安定した労働環境を求める傾向にあり、緑ナンバー事業者であることは従業員に安心感を与えます。
緑ナンバーの取得にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットも考慮する必要があります。最も大きなデメリットは経費の増加です。まず取得費用として登録免許税12万円のほか、ナンバープレート代や印紙代などで合計13万円程度が必要です。行政書士に手続きを依頼する場合は約60万円の費用がかかります。
また、緑ナンバーは自賠責保険料が白ナンバーより高額です。最大積載量が2t以上のトラックの場合、白ナンバーの年間自賠責保険料が22,570円であるのに対し、緑ナンバーは30,530円と約8,000円高くなることを考慮しておく必要があります。
さらに、緑ナンバーを取得すると法令順守のための業務負担が増加します。対面での点呼や点呼記録の作成、運転者台帳や乗務記録の記帳が義務付けられ、 これらを怠ると行政処分の対象です。運行管理者の選任や定期的な点検なども必要となり、人的コストと物理的コストの両面で負担が増加することを覚悟しなければなりません。
緑ナンバーを取得するためには、いくつかの重要な要件を満たす必要があります。まず、事業所に5台以上の車両を保有していることが基本条件 です。また、事業所の立地が運送業に適切であることや、運営に必要な十分な事業資金を持っていることも求められます。人員面では、国家資格を持つ運行管理者を選任することが必須です。
手続き面では、常勤役員の少なくとも1人が2ヶ月に一度実施される法令試験に合格し、事業者としての適性を証明する必要があります。申請には事業計画書や賃貸借契約書、見積書、残高証明書などの書類を準備して運輸支局に提出し、3〜4ヶ月にわたる審査を受けます。これらの複雑な手続きを円滑に進めるためには、行政書士への依頼も検討する価値があるでしょう。
白トラは、自社製品や商品の輸送を主に行う企業にとって最適な選択 といえます。例えば、製造業で本社から支店への商品移動が頻繁にある場合や、農業関連企業が自社で収穫した農産物を直売所へ運ぶケースなど、営利目的以外の輸送業務が中心の企業に向いています。特に 自社内での物流が中心で、外部への運送サービスを提供していない企業では、白トラの活用が効率的です。
自社の事業規模や輸送ニーズを適切に分析し、必要に応じた台数の白トラを保有することで、コスト削減と業務効率化を両立できるでしょう。定期的に輸送業務の状況を見直し、法令に則った運用を心がけることが重要です
ここまで、物流業界における白トラ(白ナンバートラック)について詳しく解説してきました。白トラとは自家用として登録されたトラックであり、自社のものを運ぶ目的であれば違法ではありません。しかし、他社の荷物を報酬を受け取って運ぶ場合は緑ナンバーの取得が必要となり、白トラでは違法行為となってしまいます。
使用用途だけでなく点検整備期間、アルコールチェックの義務化時期、税金の金額、保険料など多くの違いが存在します。白トラは初期費用や維持費が比較的安価ですが、運送業を営むには適していません。白トラで運輸業を行った場合、輸送者側には懲役もしくは罰金という罰則があります。荷主側にも企業イメージの低下など大きなリスクが伴うことを理解しておく必要があるでしょう。
運送業を合法的に行うためには緑ナンバーの取得が不可欠であり、社会的信用の獲得や事業拡大などのメリットがあります。一方で、費用増加や業務負担の拡大といったデメリットも考慮すべきです。自社の事業規模や輸送ニーズを適切に分析し、白トラと緑ナンバートラックのどちらが自社に適しているか判断することが重要です。また、 物流業務の最適化にはコモンコムのサービス活用も検討してみてはいかがでしょうか。
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